研究テーマの内容、研究活動
都市環境政策、なかでも都市公園の歴史に関心をもって研究をしてきました。現在の公園を起点にして、それが歴史的にいかにして形作られてきたか、ということを調べています。その際に、既存の公園のあり方が利用者や管理者によって問題視されるシーン、つまり公園に社会問題が表出することで、公園の空間構成や管理方法が変化することに注目しています。
具体例をいくつか挙げてみましょう。いまではありふれた、ブランコやシーソー、砂場のある子ども向けの公園は、日本の公園史において、じつは当たり前な存在ではありませんでした。1920年代にはじまった自動車の普及による子どもの事故死傷の増加、当時社会問題となった「不良少年」への警戒、児童福祉への関心の高まりという社会的な動向とリンクしながら、公園の空間構成が変化した結果が、現在の児童公園なのです。
公園のホームレス対策についても同様で、関東大震災や、たくさんの人が失業した昭和恐慌、太平洋戦争中の空襲と、急激に生じた社会的ニーズ(ここでは、住む場所を失う人が急増したこと)を前にして、公園の空間構成や公園管理の慣行が形作られてきました。
このように、都市公園の歴史を追いながら、人びとの生き方と、それを導き、気づかう政治と福祉のあり方に関心を向けています。
研究テーマの意義・面白さ、その研究を始められたきっかけや背景
私の研究分野である社会史・歴史社会学は、過去の人びとの日常的な生活や困りごとという、体系だった記録が残りにくい対象を扱います。そうしたときに、社会学の分野が蓄積してきた社会調査法やデータ分析の技術が生きてくるのではないか、と考えています。
つまり私の研究は、歴史研究・社会調査・データサイエンスの交差するところにあります。それは具体的には、私たちの先輩である大昔の研究者たちが、同時代に生きた人びとの生活を解き明かそうとおこなった調査の実践を「歴史資料」として読み解くということです。
そして同時に、長いあいだ書庫に保管されてきた調査資料(100年前に実施されたアンケート用紙の束を想像してみてください)をデジタル・データ化し、コンピュータが読み取ることのできる形に変換します。書庫に眠っていた調査記録を現代的な技術で分析することで、調査の実施当時には決して見いだされなかったような、歴史的な知見や社会学的な理論を導くことができるのです。