研究テーマの内容、研究活動
学習科学とは、簡単に言うと、「人はどんな風に学ぶのか?」「どうしたら人の学ぶ力をうまく引き出せるのか?」についての学問です。
教育について考える点は教育学と似ていますが、「人がものごとを理解するプロセスとは?」「話し合いは理解にどう役立つ?」など、学び手の頭や心のはたらきに関する研究(認知科学)をベースに考察を進めていく点が、学習科学の特徴です。
例えば、「雲はどのようにしてできるか?」という問題があったとします。正解を知らない小学生にこの問題を出してみたら、どうなるでしょう?「知らないんだから、何も言えないんじゃない?」と思うかもしれませんが、意外とそうでもありません。小学生でも、「水が何かで蒸発した」「チリと水が混ざってできた」など、経験や直観をもとに様々な考えを持っています。さらに、こうした考えを出し合うと「どういうこと?」という疑問が生まれ、自然と「調べよう」「やってみよう」という意欲が引き出されます。そのうちに、「あー、そういうことか!」と納得する答えが見えてきます。
これは1つの例ですが、こうした学びは私たちの身の回りの様々な場所で起こっています。それを詳しく見てみて、わかったことをもとに、人が自然に学んでいきやすい場面を作ってあげられたら、同じ人でも、できることはずっとよくなるはずです。学習科学では、このような考え方をもとに、小中高校の現場とも連携をしながら研究を進めていきます。
研究テーマの意義・面白さ、その研究を始められたきっかけや背景
近年、学校は大きく変わりつつあります。学習環境のICT化、対話型授業の導入、教科を超えた学習などの新たな試みがニュースでも注目を集めています。こうした変化の背景には社会からのニーズがあります。21世紀の社会では、SDGsに代表されるような、地球全体の課題、しかも誰もまだ答えを知らない課題に対し、多様な価値観を持つ人々が共に取り組み、みんなが納得のいく解を見出すことが、切に求められています。これに伴い学校にも、新しい役割が期待されているのです。
私たちは小さい頃から「学ぶ」という経験をしていますが、学んでいるときの頭や心のはたらきは、直接見たり聞いたりできるわけではないので、意外と知らないことも多いです。だからこそ、学習科学を学ぶことは、私たちが当たり前だと考えていた学校や教育の新しい可能性をみつけることにもつながります。その意味で学習科学は、新たな学校や教育のあり方を考えていくための、1つのカギになりうると言えます。