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真理はあなたたちを自由にする

  • 哲学科

加藤和哉 教授

西洋中世哲学・スコラ神学、日本近代カトリック思想史、生命倫理学

研究のテーマ

古代ギリシャに始まった哲学(知を愛する営み)がどのように継承されたか。特にキリスト教とどのように結びついたか。

研究テーマの内容、研究活動

「哲学」(philosophia)はいまから2000年以上前に古代ギリシャで、ソクラテスによって始められ、プラトンが命名し、アリストテレスによって展開されました。それはヘレニズム・ローマ世界を経て、キリスト教ヨーロッパ世界やイスラーム世界において継承され、近代になって世界中に広がり、今でも人々を真理の追求へとうながし続けています。私の研究領域は様々ですが、いずれも固定観念や既成の思考の枠組みから自由になって、世界へ、他者へ開かれていく哲学のダイナミズムを跡づけ、またそれによって現在の人間や社会のあり方を問い直す仕事をしています。
たとえば、スコラ神学は、聖書を通して語られる信仰の言葉を誰にでも理解可能な哲学の言葉で表現することを追求する営みでした。日本でも、明治時代の初めまで「邪教」として扱われたキリスト教は、真理を求める多くの人の心をとらえ、近代日本の社会、教育、思想の形成に目に見えない影響を与えてきました。明治以降のキリスト教思想、特にカトリックの思想の影響についての研究はまだ手つかずの領域が多いので、少しずつその研究を進めています。現在は、聖心女子学院にゆかりの深いカトリック司祭岩下壮一の幅広い仕事や著作の研究を中心にしています。合わせて、日本のカトリック学校の歴史をたどり、これからの宗教教育のあるべき姿を追求しています。さらに、科学技術や医療の発展に伴って新たに生じた命の始まりと終わりに関する諸問題(出生前診断・受精卵診断、安楽死・尊厳死など)にも関心を持ち、受精卵診断に関するガイドラインの作成や倫理審査にも携わっています。

「聖トマス・アクィナスの栄光」(15世紀) トマス・アクィナスが中央に座り、4人の福音記者と使徒パウロ、プラトンとアリストテレス、イスラーム哲学者アヴェロエスに取り囲まれている。
岩下壮一神父(1889-1940) ヨーロッパに留学して司祭となって帰国。著作や教育活動のほか、御殿場の神山復生病院の院長や不二聖心女子学院の前身恩情舎小学校の校長も務めた。

研究テーマの意義・面白さ

哲学の面白さは、人がふつう考えようとしないことを考えてみるところにあります。哲学は自分の立っている足元を掘り下げる作業です。わたしたちの日常生活は様々な「当たり前」を足場にしています。「学校は勉強するところだ」「社会に役に立つ人間にならなければならない」・・・。しかし、その「当たり前」を問い直すことで哲学が始まります。「勉強とはそもそも何なのか」「社会に役に立たないことは意味がないのか」・・・。そのような問い直しは、さらに自分の「当たり前」に影響を与えている教育や社会、その背景になっている歴史や文化、科学技術、思想や宗教などあり方へと広がっていきます。哲学には、こうした問いを根本的から問い続けてきた長い歴史があります。哲学者たちから問いの立て方や探求の仕方を学び、自分自身で問い直すことで、私たちは自分の足場を固め直したり、もっと深い根底を見つけることができるようになるのです。

高校生や学生へのメッセージ
大学生活は多くの人にとって、人生の中で最も自由にものを考え、探求し、行動できる機会であると思います。そして、大学時代にどれくらい幅広いものの見方を身に着け、知性や判断力を磨いたかによって、その後の職業生活や社会生活、そして個人の精神生活のなかでどれくらい自由になれるかが決まります。「真理はあなたたちを自由にする」・・・この言葉を常に心にとめて大学生活を送って欲しいと思います。
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