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身体の病と心理臨床―がん患者と家族を支える―

  • 心理学科

小林 真理子 教授

臨床心理学、保健医療心理学、子どもの心理療法、がん医療における心理支援、グリーフケア、がん教育

研究のテーマ

子育て世代のがん患者と子どものサポート

研究テーマの内容、研究活動

私の専門は臨床心理学です。大学卒業後十数年間は、児童精神科を主とした病院臨床に従事し、その後大学で教育に携わる傍ら、子どもと家族を対象に病院や学校・地域で心理臨床を積み重ねてきました。現在は、小児・AYA(Adolescent and Young Adult)、子育て中のがん患者さんと家族の心理的サポートの実践と研究に取り組んでいます。

これまで仲間と共に、親のがんをお子さんに伝えるための絵本(2010)を作成したり、伝えた後のサポートの一つとして、学童期の子どもを対象としたサポートグループの実践(CLIMB®プログラム日本版の作成と実施、2010~現在)を行ってきました。最初の3年間の介入研究で効果を確認したのち、多施設開催へと展開しています。
また、子どもが多くの時間を過ごす学校との連携をめぐって、いくつかのアンケート及びインタビュー調査を実施し、学校における支援に役立てるための冊子(初版2012,改訂版2019)を作成し配布してきました。最近では、学校での「がん教育」が始まったことを受け、「がん教育」を行う際の配慮事項についてまとめたり、当事者への調査を行ったりもしています。今後、新たな実践や調査も加え、がん患者さんの子どもと家族への支援に関する家庭・学校・医療機関をつなぐ支援リソースの開発を続けていきたいと思っています。

乳がんになったお母さんと子どものために作成した絵本。小学館 (2010/2/8)
「親ががんになったとき-子どものために学校にできること 」(初版2012,改訂版2019)

研究テーマの意義・面白さ

日本人の二人に一人が一生のうちにがんと診断される時代、がん治療を受ける人々は年々増加し、その中には子育て世代のがん患者さんも多く含まれています。がんは家族全体に大きな影響を及ぼします。がん患者さんにとって治療しながらの子育ては心身ともに厳しいものです。子どもにとっても親ががんになったことの影響は大きく、家族に起きている状況を子どもにどう伝え、どう支援していくのかは大きな課題です。子どもは敏感に状況を察知し不安を感じてしまう一方、大人が思っている以上に困難に立ち向かっていく力を持っています。子どもそして家族の力を引き出すために、周囲の理解や支援の輪が広がっていくことが望まれます。そこで、医療機関での個別面接やサポートグループ等の直接的な支援と並行して、がん医療に携わる医療者向けの研修(ファシリテーター養成講座等)も提供しています。参加者(子どもたちや家族、支援者)がエンパワーされる場を共にできること、支援のネットワークが全国へと拡がっていることは本当にうれしいことです。
これからも臨床の場での実践と研究、教育が有機的につながっていくような活動を続けていきたいと思っています。

高校生や学生へのメッセージ
臨床心理学は実践に根差した学問です。個人の体験や日常の身近な課題への関心から研究のテーマが導かれることも多いです。自らの体験を大事にしながら、同時に中立的・客観的な視点をもち、その間を往復しながら学びを深めていくことはとても実りあることと思います。
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