研究テーマの内容、研究活動
皆さんは「創造性」とか「クリエイティビティ」という言葉にどのようなイメージを持っていますか?もしかしたら、「自分には創造性なんて特別な力はない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、心理学では全ての人に多かれ少なかれ創造的な力があると考えます。大切なのは、それを発揮したいと思うか、そして、どのようにして創造性を発揮するかなのです。
私はこれまで学校や美術館など学校内外で行われる創造性教育に興味を持ち、どうすれば人々が創造性を発揮できるようになるかを考えてきました。
創造性を育むワークショップなどの場には、様々な人が集まります。興味があって来てくれることもあれば、たまたま通りかかった、友達に誘われたなど、様々な理由で参加してくれます。
興味深いのは、参加者に自由に何かを作ったり表現したりしてもらうと、一人として同じものを生み出すことがないことです。一挙手一投足にその人の個性が現れているのです。しかし、生み出した本人はそれを創造性の発揮とは捉えていないことも多いです。そうした創造性の捉え方を少しずつ緩めていくと、今度は参加者同士がコミュニケーションを始めます。そこで互いのアイデアが化学反応を起こして、新しい創造が生まれます。私はこうした現象を触発(インスピレーション)として捉えて、触発を促す支援を考えています。
研究テーマの意義・面白さ
創造性はヒト特有の能力の一つとして、長年注目されてきました。学校の中でも社会に出てからも創造性を発揮できる人が大切だと言われています。創造性を発揮して周りの人のためになったら嬉しいですよね。しかし、それ以外にも創造性は自分らしさを表現することや心の豊かさにもつながっています。自分らしさを発揮しながら他者とも認め合って、人生を豊かにする。こうした創造性の発揮をサポートする方法を考えて、どうすれば多くの人が自分らしさを発揮する場ができるのかを探るのもとても楽しいことです。
私が研究を始めたのは、親族に音楽や美術など芸術や芸術教育に関わる仕事をしている人間がいたことがきっかけです。創造性を発揮することは楽しい側面もありますが、仕事にすると創造の苦しみに直面することもあります。しかし、心理学という学問の力で創造性を発揮するメカニズムを知ることができれば、苦しさにも意味があることがわかったり、それを乗り越える支援を考えたりすることができます。創造性研究はそれ自体が楽しいですが、様々な場面でヒトが創造性発揮する一助になれると考えています。