1. HOME
  2. 受験生の方
  3. 聖心Voices
  4. 互いに影響を与え合う自己と他者

互いに影響を与え合う自己と他者

  • 心理学科

平井 美佳 教授

臨床心理学,発達心理学,家族心理学

研究のテーマ

自己、人間関係、家族、自己分化、アサーション、自己と他者の調整

研究テーマの内容、研究活動

「人」の「間」と書くように、人間は生涯にわたり他者との関係の中で生きています。みなさんの多くは、誰かと親密になりたい、大切な人々との良い関係を維持したいと思っていることでしょう。一方で、時には人間関係の柵(しがらみ)から離れて、自分らしく生きていきたいと思うこともあるでしょう。このように、人は「関係性」と「自律性」という、一見すると相反する2つの欲求を持っています。
私は心理学の研究者としてこれまで、人々がこの関係性と自律性のバランスをどのように取るのか、また、どのようにバランスが取れるとより適応的であるのかということに関心を持って研究を続けてきました。具体的には,幼児から高齢者までのさまざまな人々を対象に、自己と他者の要求が対立する架空の場面に対して「もし私だったらどうするか」、また、これまで実際に「どのようにしてきたか」についてアンケートやインタビューで尋ね、その回答を分析してきました。これらの研究からは、人々の多くが自分にとって譲れないことについては自己を主張し、時には大切な他者のために一肌脱いだり、相手を立てて譲歩するというように、状況に応じて「自己と他者の調整」を行うことが示されました。

研究テーマの意義・面白さ

この関係性と自律性の両者は生涯にわたり変化・発達し、興味深いことに2つの側面が相互に影響を与え合います。たとえば、子どものみならず大人であっても、安心できる関係の他者に寄り添われ、支えられている(いた)からこそ、世界を探索したい、自分らしく歩みたいという気持ちが出てくるものです。また、私たちは他者との関わりの中でこそ、自分自身をより深く知ることができます。みなさんが進路について思い悩むとき、ヒントをくれたり、自らの考えを明確にしてくれるのは、いつも他者との関わりやその経験ではないでしょうか。また、自分にとって重要な人々で構成された人間関係のネットワークを自らつくっていくのです。

研究を始めた若い時の私自身も、今のみなさんと同じように、関係の中に生きる自分自身のあり方について考え、時に悩んでいたのかもしれません。また、自己と他者、個人と集団、女性と男性、西洋と東洋といったさまざまな二項対立的なものの見方に疑いの気持ちを抱いていました。二項対立はわかりやすいですが、生身の人間を理解するには不十分です。日々の中で、対置されたものどうしが関わり合い、混ざり合い、相互に作用することで私たちのリアルな生は成り立っているのではないでしょうか。
心理臨床家としては、関係的でありながらも自己決定的である「自己分化」が促進されるような支援を目指しています。より日常的で具体的なレベルでの調整には、自己と他者をともに尊重するコミュニケーションである「アサーション」の考え方が役に立つこともあるでしょう。

高校生や学生へのメッセージ
皆さんが今いる青年期は、いよいよ自分らしい人生を模索し始める時期です。この時期に自分自身を見つめ、その先の生き方について考えることは、これからの皆さんをつくる重要な1つの要素になると思います。また、多様な個性を持つ人々が互いに互いを尊重し合えるこれからの社会の実現に向けて、若い皆さんの力に大いに期待しています。
聖心Voices 一覧ページへ戻る