研究テーマの内容、研究活動
コロナ禍以前には、美術教育学に関連して海外を訪問する機会が度々ありました。2019年には台湾、中国、カンボジア、イタリアなどの国々から招聘され、日本の美術教育について講演したり、研究交流を行ったりしました。
カンボジア王国では、過去の悲しい歴史を背景として、美術や音楽などの教科がありませんでした。そのことを受けて「アート」教科設立の支援活動をJICA等の機関を通して行ってきました。学習指導要領や国定教科書作りに数年来協力し、教育省の専門スタッフにレクチャーしたり、パイロット授業の評価で地方に伺ったりしました。写真①は、身辺材料を使って造形遊びを行うカンボジアの1年生です。初めての活動にもかかわらず、輝く笑顔で楽しく自分自身の内なる形を表現しています。
写真②は、調査で訪れたイタリア中部フォルリの小学生が、2020年の3月25日「ダンテの日」を記念して描いたもの。ダンテの頭文字Dから、本を読むダンテが顔を覗かせるウイットに溢れた絵です。詩人ダンテはアーティストの想像世界に多大な影響を与えましたが、子ども達はウイルス禍によって強固にロックダウンされた空間の中であっても、主体的に楽しく想像し、表現することを実践しています。
また、2022年には、ロシアのウクライナ侵攻を機に、同僚の永田佳之先生と共に「ウクライナ&ロシア子ども絵画展 -平和の再創造へ」を本学4号館で企画展示しました。両国の子ども達が描いた同数の絵画を前に、今、何を為すべきかを考えて欲しいと願いました。両国の子どもたちの絵に限りませんが、子どもたちの絵からたくさんのパワーと勇気を得たという感想を多くの方々から頂戴しました。
子どもたちの表現には、人間本来の「魂」の所在が示されています。そのことが私自身の研究の道標となっています。
研究テーマの意義・面白さ
大学生の頃に大人から幼児さんを対象とした絵画教室でアルバイトをしていました。その際に子どもたちの描く絵が、とても「純粋で美しい!」ことに感動しました。自身の描く絵よりも、子どもたちの描く絵をサポートする仕事に従事したいと思うようになりました。その後、大学院で美術教育について学び、6年間の小学校図画工作専科教員として勤務した後に、大学での教員生活に入り、現在に至っています。