研究テーマの内容、研究活動
「音声学」は言語の音声や発音を研究する学問分野です。最近取り組んでいる研究テーマの一つは、国際共通語としての英語の明瞭度、つまり「わかりやすく通じる英語発音とは何か?」です。日本語母語話者が難しいと感じる英語発音は、LとRの区別、THの発音、日本語/a/に対応する母音の数々、子音の連続、リズム、イントネーションなど挙げればきりがありません。どの要素が最も明瞭度に影響し、どの要素を優先的に練習するのが明瞭度の高い発音への近道なのでしょうか?
明瞭度は実は検証するのがとても難しいテーマです。なぜなら、世界の英語話者は多様で、母語話者であれば出身地など、非母語話者であれば母語などによって、一口に「英語」と言っても実は驚くほど様々な発音があるからです。日本語母語話者が話す英語の明瞭度が、聞き手が母語話者の場合と非母語話者の場合とで、どのように異なるのかという問いも探究しています。
音声指導も強い関心をもっているテーマです。言語教育において音声指導は不可欠な分野ですが、発音は文法や語彙など他分野と比較するとこれまであまり注目されてきませんでした。効果的な指導法や教材の作成、発音の評価法の提案、発音モデルや到達目標の検討などにも取り組んでいます。
研究テーマの意義・面白さ
「littleが〈リルー〉と聞こえるのはなぜだろう?」「英語話者の中にはthinkを〈ティンク〉と発音している人がいるのでは?」「FebruaryのRは本当に2つきちんと発音されているのか?」など、私がもっていた疑問を解決してくれたのが、大学で受けた英語音声学の講義でした。英語は地域などにより発音に差があり変化してきたこと、また発音には実は様々な規則があり母語話者はそれを無意識に使いこなしていることなどを学び、ますます言語の音声に興味を持ちました。
音声学の研究は、音声認識や音声合成、スピーチ・セラピー、言語や方言の記述、演技におけるアクセント指導など様々な分野に活かすことができますが、私がとくに関心をもっているのが英語教育分野への応用です。英語のリスニングやスピーキングには必ず音が関わります。小中高の学校現場や教員を目指す学生達、そして発音や聞き取りを向上させたいと願う英語学習者に少しでも役立つような研究を目指しています。