研究テーマの内容、研究活動
私はこれまで、大学に所属し研究活動や教育活動に従事しながら、心理臨床の現場で公認心理師・臨床心理士として心理支援活動を実践してきました。研究もいくつかのテーマについて行ってきましたが、これまで継続して取り組んできた主要なものは、障害や難治性疾患を持つ人のWell-beingについてです。具体的には、ポリオ後遺症や脊髄損傷により身体障害を持つ人、統合失調症により精神障害を持つ人、難治性皮膚疾患である乾癬を持つ人などを対象として、質問紙調査やインタビュー調査を行ってきました。Well-beingは、日本語で「幸福」などと訳されたり、そのまま「ウェル・ビーイング」と片仮名で用いられたりしますが、その人なりの「良いあり方」という意味合いを含んでいます。現在の医療では治癒が難しい状態となった人のWell-beingに資する要因は何か、どのような支援を行うことができるのかについて研究しています。心理的要因だけではなく、身体的要因や、環境・社会的要因等も含め検討し、総合的な支援につながる知見を見いだしてきました。
研究テーマの意義・面白さ
私たちは、日々の生活を送るうえで、さまざまな困難に遭遇します。それは、ちょっとした躓きであったり、その後の人生を左右するような大きなものだったりします。そのような困難にどのように向き合い、その人なりの「良いあり方」につなげていくか、臨床心理学の研究はそのための知見を積み重ね、貢献していくものだと考えています。そのような自身のあり方は、環境や社会からも大きく影響を受けますので、私は多様な観点を取り入れた精神保健学的なアプローチも大事にしています。私が行っている障害や難治性疾患を持つ人を対象とした研究は、その当事者への支援を考える上で重要な基盤となることはもちろんですが、生きる上でさまざまな困難に遭遇する私たちが、それにどう向き合っていくかということを考えるための多くの示唆を与えてくれます。この研究を行う中で得たものは、私の心理支援の実践にも大きな影響を与えています。研究と支援が分かちがたくつながっているということを私に教えてくれた大切なテーマです。