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哲学者はどのように社会的課題に向き合ってきたのでしょうか?

  • 哲学科

佐藤 紀子 専任講師

フランス哲学 労働の霊性

研究のテーマ

シモーヌ・ヴェイユにおける労働者教育の変遷

研究テーマの内容、研究活動

フランスの19世紀・20世紀の哲学者を研究しています。最近はシモーヌ・ヴェイユ(1909-1943)という女性の哲学者の労働者教育と哲学の関係について研究しています。
ヴェイユは教師としてフランスのリセで哲学を教えながら、工場や農場などで働き、働くことを哲学的に思索した哲学者です。25歳のときに哲学教員の仕事を休職してアルストン社やルノー社で未熟練工として約1年間、工場で働きました。このときに記した『工場日記』はいまも読み継がれ、読者になにが人間にとって親しみのある労働となりうるのかという問いをつきつけます。
ヴェイユは戦争の時代を生き、晩年の4年間は亡命生活を送りました。亡命中も思索と労働をつづけ、困難な時代のなかでも精神の自由を追い求めます。亡命先のマルセイユでぶどう摘みなどの農業に従事するとともに、哲学や物語をもちいた労働者教育の構築を模索しました。これらの資料を読み解いたり、実際にヴェイユがたずさわった作業工程や工作機械を確定したりしながら、ヴェイユの労働者教育が移り変わっていく過程を調査・研究しています。

最近たずさわった本

研究テーマの意義・面白さ

シモーヌ・ヴェイユの著作にはじめて触れたのは、聖心女子大学の哲学科で哲学を学びはじめてすぐのときでした。演習で取り上げられたのが、ヴェイユがリセで教えていた授業を記録した「ヴェイユの哲学講義録」でした。当時はその重要性がわかりませんでしたが、博士課程でヴェイユの指導教官だったレオン・ブランシュヴィックを研究し、ヴェイユが生きていた時代の哲学的背景を自分なりに理解していくなかで、シモーヌ・ヴェイユの重要性がわかるようになりました。
 ヴェイユ以外にも労働者に哲学教育をおこなった哲学者は何人もいますが、ヴェイユはみずからが労働し、労働者の身体性と精神性にもとづく労働者教育を模索しているようにみえます。ヴェイユの労働者教育の変遷を明らかにすることで、労働と哲学のあたらしい関係性を見出せるのではないかと期待して、研究をすすめています。

高校生や学生へのメッセージ
大学生活は授業のなかだけではなく、様々なところに学びのきっかけがあります。いろいろなことにチャレンジをして、自分ひとりではけっして発見できなかったことをたくさん見つけてほしいと思います。自分とは異なる意見、自分ではけっして見いだせなかった視点、自分では選ばなかったかもしれない本、そのような偶然の出会いに大学はあふれています。この学びの空間で、いっしょに勉強しましょう。
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