研究テーマの内容、研究活動
奈良時代・平安時代の官司(役所)で、官人(役人)たちが日々どのように仕事をしていたのかを研究しています。今から1000年以上前のことですが、調べていくと当時の役人たちの仕事ぶりは、どのように仕事をさぼっていたかということも含めて、現代の役所や会社と共通する面が少なくありません。例えば、現代でも仕事上、初対面の人と人との間では名刺交換をしていますが、そのような習慣は7世紀後半までさかのぼる可能性があります(当時の名刺にあたるものは「名簿」と呼ばれていました)。もちろん現代と1000年以上前では、違う点も多いのですが、それではなぜ違うのかということを考えていくと、奈良時代・平安時代の社会と現代の社会、それぞれの特徴をうきぼりにするヒントを得ることができます。
ゼミ旅行で訪れた正倉院校倉造の倉庫の真下で。
研究テーマの意義・面白さ
今から約40年前の大学院生のころ、『小右記』『御堂関白記』といった平安時代の貴族の日記を授業や研究会で読んでいくうちに、そこに記された当時の貴族の仕事ぶりに関心を持つようになりました。この時代の日記は、プライベートな生活のことよりも、朝廷で行われていた儀式や政務のようすのほうが事細かく記されていて、それらがなぜかおもしろく(そんなことのどこがおもしろいの?といわれることもありますが)、複数の日記を読み比べるなどして、より詳しく調べていくようになりました。とはいえ、個人が記した日記なので、その人の個性―細かいことを気にしない大雑把な性格、人の悪口ばかり書く陰湿な性格など―も日記の文面ににじみ出ていて、ニヤリとさせられることもしばしばあります。