研究テーマの内容、研究活動
社会学の立場から、家族のような私的な人間関係や生活のあり方について研究しています。受験生のみなさんにとって家族といえば、両親やきょうだい、もしかしたら猫や犬なども思い浮かぶのかもしれません。
少し考えてみて欲しいのですが、将来、結婚して子どもも持ち自分たちの家族を形成したら、配偶者や子どもは当然家族ですよね。ではそのとき、現在家族であるところの両親やきょうだいやまだ存命かもしれない実家の猫や犬はもう家族ではないのでしょうか。たぶん家族ですよね。
とすると、将来の配偶者にも同じように父や母やきょうだい、そして猫や犬がいるかもしれず、かれにとっては依然として家族であるとして、でもあなたにとっては家族ではないかもしれない。配偶者となるかれにしてみても、あなた自身の親やきょうだいや実家にいる猫や犬を家族とみなすとは限らないとするならば、あなたが家族とみなす範囲とあなたの配偶者が家族とみなす範囲は一致しないということになります。ややこしいですね。
家族を集団としてとらえるならば、すべてのメンバーにとって、その範囲は一致するはずです。でも、誰かの視点を起点として描かれるような範囲を家族とみなすならば、そこに登場する人々それぞれの視点を起点とする家族が描けるはずですし、その範囲は一致しない。むしろそれが普通なのだと思います。このように家族のような人間関係はそれを形成する当人の視点からしか把握できないような側面があり、それがまたけっこう重要なものだったりするのではないかと思います。
研究テーマの意義・面白さ
誰もが一定の年齢になると結婚し、仕事を持つ夫と専業主婦の妻に2, 3人の子どもという家族を形成する、そうした生き方（ライフコース）は20世紀の産物です。日本では1950年代から70年代にかけて一般化しました。現代社会においても一つのモデルとしてはあり続けていますが、みんながそれを求めているわけでも、またみんながそれを実現できるわけでもなくなりつつあります。そうしたなかで人々にとって家族とはいかなる意味づけを与えられているのか、また、社会的に期待される家族のあり方(家族規範)とどのように折り合いをつけながら自らの家族関係と生活を実現しているのか、そんなことを研究しています。