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「地球人」にとってのニュースはあるのか?-「国籍」のないジャーナリズムの必要性

  • 国際交流学科

鈴木 弘貴 教授

グローバル・ジャーナリズム、国際マスコミュニケーション

研究のテーマ

社会のグローバル化が進行する中で、ニュース・ジャーナリズムのグローバル化(国家・国民・国境に囚われない、地球規模的な視点からのニュースの提供)を考える

研究テーマの内容、研究活動

もし、あなたが、トヨタの社長だとして、あと5分後に全社的な会議に臨まなければならないとしよう。言うまでもなくトヨタは今や、日本というたかが一国内で活動している企業ではなく、その工場、研究所、営業拠点、関連会社、取引企業など、人材も資材もマーケットも世界中に広がっている「グローバルカンパニー」である。あなたはその社長として、あと5分後の会議冒頭での地球各地に散らばっている社員向けのスピーチに備え、「今の世界」がどうなっているのかを手っ取り早く知りたい。さて、その時あなたは、どのメディア、どのニュース番組、どの新聞、どのサイトを見るだろうか?偏りのない、フェアーな、アフリカからヨーロッパ、アジアからオセアニア、南米から北米まですべての地域に目配りをしたうえで、「今、この時点でのグローバルに重要なニュース」を提供してくれているメディア・ジャーナリズムは?

私の研究は、これを「グローバル・ジャーナリズム」と呼んで、それにトライしているメディア(例えば、CNN Internationalとか、BBC World Newsとか、Al Jazeera Englishなど)を研究し、その限界や可能性を探っています。研究方法としては、基本的には、内容分析(実際にどのようなニュースを選択し、どのようにストーリー化して伝えているのか)と、インタビュー(記者や編集者が、どのような問題意識の下に日々のジャーナリスティックな活動を進めているのか)が二本柱です。

調査で訪れた世界各地の放送局

研究テーマの意義・面白さ

今や、「グローバル化」という言葉を聞かない日はないと思います。先のトヨタの例のような経済活動は言うまでもなく、人々の行動様式(例えばSNS)や価値観(例えば環境問題意識)、流行や好み(例えば服装や映画・音楽)など、社会・文化領域に至るまで国境の壁が低くなり、国家・国民間の違いが薄れつつあります。こうした流れの中で、「ニュース」=つまり「今、何が一番大事か。今、何を知っておくべきか」=だけは、依然として国家・国民・国境別に作られ、消費されています。このことが引き起こす問題については、2019年の秋に本学で開催されたTEDで講演し、それがYoutubeにアップされていますので、関心のある方は見てみてください(https://www.youtube.com/watch?v=Gji68TO7JGI)。果たして、今後この「ニュース」も「グローバル化」されていくのかどうかは、「グローバル化」の進展の行方を占う、興味深い研究テーマだと考えています。

高校生や学生へのメッセージ
今や皆さんにとって、「ニュース」はスマホで見るものでしょうが、それはあなたの好みに合わせてAIが選んでいる、「あなた専用のニュース」です。世の中はグローバル化が進んでいるのに、ニュースだけはパーソナル化が進んでいる。すると、あなたは世界の誰とも、「共通の問題を、同じ土壌で議論する」ことができなくなっていく。同じ「地球人」なのに。
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