研究テーマの内容、研究活動
「寄せては返す波」のような「AてはB」、「行ったり来たりしている」のような「AたりBたり」のように、A・Bに動詞が現れるパターンがあります。これらのパターンで、もっともよく使われる動詞の組み合わせは何か、どのような組み合わせだと使用できないのか、それはなぜか。日本語母語話者であっても、すぐに答えることは難しいと思います。日本語母語話者はそんなことを知らなくても日本語が使えるので、たいして困りもしません。しかし、日本語を外国語として学ぶ人にとっては、どういう意味の動詞の組み合わせを使ったらいいか、どんな文脈で使ったらいいか、大きな問題なのです。
日本語の語や文法の使用パターンを見つけるために、私はコーパス(大規模な電子化された言語データの集積)という道具を使って研究しています。コーパスをよく観察すると、ある表現によく出てくる動詞以外にも、活用形の偏り、文脈の傾向もつかむことができます。直感ではわからないことをコーパスで調べ、日本語の使用の傾向をつかむことは、私たちにとって一番身近である日本語の、これまで気づかなかった側面を知るきっかけにもなりますし、日本語教育の現場においても非常に役立ちます。
研究テーマの意義・面白さ
私の研究のきっかけは、学生時代、留学生の友人からの質問にうまく答えられなかったことから始まっています。母語話者の感覚に頼った説明では、人によって違ったり、外国の方には伝わりにくかったりすることがよくあります。また、辞書を引けばことばの意味はわかりますが、それだけでは適切に使えるようにはなりません。留学生の友人から「一緒に使うことばや、どんな文脈で使うのか、そういう情報があるとわかりやすい」と言われたことがきっかけで、ことばの「クセ」をデータに基づいた分析をして見える形で示したいと思うようになりました。日本語を学ぶ人のために、という気持ちもありますが、自分の母語について今まで意識しなかった部分に光を当て、新しいことを知る面白さがあります。