研究テーマの内容、研究活動
あなたに、外国人の友だちができたとしましょう。その友だちに「あなたの宗教は何ですか」と聞かれたら、あなたはどのように返事をしますか。法事でお寺に行ったことを思い出して「仏教」と答えたり、お正月に神社に行ったので「神道」と答えたりするでしょうか。その友だちはさらに問いかけます。「それはどんな宗教ですか。」さあ、あなたはこれに答えられるでしょうか。答えられなかったら、たぶんあなたの友だちは失望するでしょう。なぜなら、このような問いに答えられないあなたを、自分自身について考えたことがない、あるいは、少なくとも説明することのできない、幼い人だと思うからです。
私は、自分のことを理解するには、自分が何を信じて生きているのかを顧みることがとても大事だと思っています。そのためには自分の内面だけを見るのではなく、自分が生まれ育った風土、伝統なども考える必要があります。それゆえ私は、私のように日本で育った人たちの信仰に興味をもって、それを思想書や文学、伝統文化を手がかりにして研究しています。
このような思索は、さまざまな考えをもつ人々と一緒に生きていくためにも必要です。他人の考えを許容するためには、まず自分のなかに、それを理解できる足場をつくっておかなければなりません。ソクラテスを勉強したことのある人は「なんじみずからを知れ」という言葉を聞いたことがあるでしょう。まずは自分自身をよく知ること、そのためには、実は自分が自分についてよく知らないということを自覚することから始めなければなりません。冒頭のような経験のある人なら、それはよくわかるでしょう。
研究テーマの意義・面白さ
キリスト教は外来宗教です。それを日本人が信じるには葛藤がつきもののようです。がんばって伝統文化と接合させたり、その接合を不純だと拒否してみたり…。しかも、いま言ったばかりの「伝統」とは何でしょう。日本にとって仏教でさえもともとは外来宗教です。そんな果てしない問いの存在することが、私の研究の面白さです。