コード
DF52-01
授業科目
ヨーロッパ現代史Ⅱ
副題
(ネーションと「人種」、ジェンダーを軸としてヨーロッパの歴史を読み解く)
副専攻
A2・D3・D4
特記事項
担当者
中村 綾乃
単位
4
期・曜時
通年 水3
対象学年
1(B)・2・3・4年
学習目標
①国家や国民、民族、地域、文化、労働者など自明のものとして使われる言葉に着目し、ヨーロッパの歴史を再考する。
②外国史を、日本史とは別個の普遍史とするのではなく、日本史や日本社会との接点を捉えながら、比較や検討の視点を切り開いていく。
授業概要
2000年に改正された新国籍法によって、ドイツでは出生地主義に基づく国籍取得が可能となり、帰化要件が緩和され、二重国籍が認められるようになった。国籍法改正から10年、さまざまな肌の色や宗教、民族と結び付けられるドイツ人のイメージが模索されているが、ドイツ社会に溶け込まない「平行社会」の存在が浮き彫りとなっている。また欧州統合の拡大を背景とし、ヨーロッパ・アイデンティティの高まりもみられる。帝政期以来、血統主義による国籍取得を原則としてきたドイツの国籍法は、出生地主義をとるフランスの国籍法と対置されてきた。歴史的に、フランス人が政治的な「国家国民」であるのに対し、ドイツ人は民族的に同質な「文化国民」であり、日本との類似性もしばしば指摘される。
この授業では、ネーションと「人種」、ジェンダーを基軸に据え、ヨーロッパの近現代を読み解いていく。近代国家は、国籍という制度によって「他者」を規定し、排除と内包の論理によってネーションを形成してきた。政治的統一に遅れたドイツにおいて、どのように「ドイツ人」や「ヨーロッパ市民」としてのアイデンティティが形成されたのか、ジェノサイドとの関連、欧州連合の拡大に重点を置いて考察していく。
テキスト
特定のテキストに沿って授業を進めることはしない。参考文献や資料は、適宜紹介する。
参考文献・課題図書
工藤章・田嶋信雄『日独関係史』(東京大学出版会、2008年)
竹岡 敬温、 川北 稔『社会史への途』(有斐閣、1995年)
姫岡とし子+川越修『ドイツ近現代史ジェンダー入門』(青木書店、2009年)
弓削尚子『啓蒙の世紀と文明』(山川出版、2004年)
山本秀行『ナチズムの時代』 (山川出版、1998年)
M. バーリー、W. ヴィッパーマン『人種主義国家ドイツ』(刀水書房、2001年)
矢野久『ナチス・ドイツの外国人』(現代書館、2004年)
D. ポイカート『ナチス・ドイツ-ある近代の社会史』(改装版)(三元社、2005年)
矢野久『労働移民の社会史-戦後ドイツの経験』(現代書館、2010年)
石田勇治・武内進一『ジェノサイドと現代世界』(勉誠出版、2011年)
T・ジャット『ヨーロッパ戦後史』上・下(みすず書房、2008年)
その他、毎回の授業で適宜参考文献、資料等を紹介する。
受講生への要望
日常生活の中で抱く素朴な疑問や発想は、主体的に研究課題を見つけ、取り組んでいく上で極めて重要となります。聞くだけの講義に終わらせないよう、授業を通じて感じたこと、意見や質問をぜひ寄せて下さい。
評価方法
平常点(出席と授業への参加度)、学期末試験と夏期休暇中の読書レポートにより総合的に評価する。
授業計画
1.ガイダンス―西洋史から世界史へ
2.日本におけるドイツ・イメージ―質実剛健な国民と環境立国
3.ドイツ・アイデンティティの諸相①-オスタルジー
4.ドイツ・アイデンティティの諸相②―映画『グッバイ・レーニン』一部上映
5.ドイツ・アイデンティティの諸相③―ドイツ市民への登竜門
6.拡大するヨーロッパ①―ヨーロッパ・アイデンティティ
7.拡大するヨーロッパ②―トルコとヨーロッパ
8.人種概念の誕生①―「白人」と「非白人」のカラーライン
9.人種概念の誕生②―植民地主義とジェンダー
10.人種概念の誕生③―ドイツ植民地における「最初のジェノサイド」
11.黄金の20年代?―ナチズムの台頭
12.「純粋なドイツ民族共同体」の形成①―ナチ人種法とジェノサイド
13.「純粋なドイツ民族共同体」の形成②―映画『ヨーロッパ・ヨーロッパ』上映①
14.「純粋なドイツ民族共同体」の形成③―映画『ヨーロッパ・ヨーロッパ』上映②
15.ホロコーストからパレスチナ問題へ①―戦後のユダヤ人社会
16.ホロコーストからパレスチナ問題へ②―パレスチナ分割案
17.ホロコーストからパレスチナ問題へ③―ユダヤ人国家イスラエルと周辺諸国
18.ナチ戦犯の追及―「イエルサレムのアイヒマン」
19.戦後ドイツの「過去の克服」①―ホロコーストの記憶文学と証言
20.戦後ドイツの「過去の克服」②―記念碑
21.日独関係史①―ドイツからの黒船
22.日独関係史②―ドイツに学んだ留学生①
23.日独関係史③―ドイツに学んだ留学生②―森鴎外『舞姫』と『普請中』
24.日独関係史④―日清、日露戦争と三国干渉
25.日独関係史⑤―黄色いアジア人の脅威
26.日独関係史⑥―日本で最初の『第九』とバームクーヘン
27.日独関係史⑦―映画『バルトの楽園』の一部上映
28.日独関係史⑧―「不承不承の同盟」
29.「68年世代」と戦後ドイツ
30.まとめ―レポート作成の注意点、質問等
自由記述欄
授業のテーマに関連した映画等、ドキュメンタリー番組等の映像資料を用います。時代背景や脚本、監督について事前に説明しますので、映画を「鑑賞」するのではなく、「分析」することを心がけて下さい。
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