授業概要 |
キリスト教の神学が学問として成立した13世紀の代表的著作家であるトマス・アクィナスを研究します。キリストの教えを、理性によってできる限り探求し、単に信仰者の言葉によってではなく、誰にでも理解できる学問の言葉で表現しようとする試みを学びます。 |
課題・評価 |
分担したテクスト箇所についての発表と研究レポート(年度末)とによって評価します。 |
テキスト |
トマス・アクィナス『神学大全』第9冊(第II−I部第1−21問題)高田三郎・村上武子訳、創文社、1996年。 Thomas Aquinas, Summa Theologiae, Pars Prima et Prima Secundae, cura et studio Sac. Petri Caramello, cum textu ex recensione Leonina, Editio Marietti (Italy), 1952. |
参考文献 |
稲垣良典『トマス・アクィナス』(講談社学術文庫)。 |
受講生への要望 |
ラテン語を学んでいるか、学ぶ意欲のある人に限ります。ラテン語の知識のない人、不十分な人は、同日に開講する「哲学史演習I」を履修して下さい。 |
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授業計画 |
昨年度に引き続き、トマスの『神学大全』(Summa Theologiae)の第II部を読みます。箇所は第II部のI、第2問からです。 神学の入門書として書かれた同書の第II部は、「神に似せて造られた」(旧約聖書・創世記)とされる人間に焦点を合わせ、人間の幸福、行為の構造、徳や習慣、罪、法、そして恩寵などの諸問題をあつかっています。アリストテレスなど古代の倫理学をふまえつつ、アウグスティヌスなどキリスト教の思索を整理し、統合したもので、単に西洋中世の倫理思想の第一級の著作であるにとどまらず、古代からの倫理学の集大成ともいえるものです。高度に抽象的な神論を含む第I部とは異なり、具体的状況をあつかうこの部分は、はじめてトマスに触れる人にも比較的読みやすいでしょう。 授業は演習形式で、原則として、一回に一項目進みます。担当者がテクストを読み、議論を整理して提示し、それに基づいて、参加者全員で考え、討論します。
演習は、時間の制約上、ラテン語原文ではなく、日本語訳を底本として使用しますが、解釈上、必要に応じて原文も参照します。
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