授業概要 |
奈良時代以前、古代前期(上代)の文学について、その史的展開を追跡する。古代と近代を往復しつつ、文学史という学問を支えてきた思考の枠組み自体を対象化し、古代という理念を近代が作り上げてきた事情を見届けてゆく。 |
課題・評価 |
夏期休暇明けの小テストと、学年末の試験(持ち込み可)、および、もしかすると課せられるかもしれない不定期のレポート。 |
テキスト |
講義の進行に沿って随時印刷資料を配付する。 |
参考文献 |
品田『万葉集の発明』新曜社 伊藤博校注『万葉集(上・下)』角川ソフィア文庫 山口佳紀・神野志隆光校注『古事記』小学館・新編日本古典文学全集 |
受講生への要望 |
授業は配付資料によって行なうが、扱える範囲には限度があるので、各自原典に親しんで理解を深めて欲しい。 |
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授業計画 |
1.序論または挑発。文学史とは何か。それは何を担ってきたか。「日本」文学史という枠組みは自明か。そもそも「文学」とは何か。あるいは何を意味してきたか。 2.〈国民の文学の学〉としての国文学。近世国学との関係。また、近代の国語教育における古典の扱いについて。 3.史的区分としての「上代」とは何か。また、文学の「発生」という立論と、民族の「起源」という想像の関係について。 4.短歌とは何か。五七音節定型はどのようにして成立したか。それを「民族の生理」として自然化する論理は、いつ、どのようにして生まれたか。 5.声と文字。古代列島社会における書記言語の交通と、そこに寄生して成立した「万葉語」との関係。また「ことだま」について。 6.いわゆる記紀神話について。『古事記』と『日本書紀』の相違と相互補完的関係。古代天皇制の正統性を主張する書が日本の「民族神話」とされた経緯と、その余波。 7.近代における『万葉集』の享受と、その過程で生じた変容について。 |
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