聖心女子大学の奥行きを知る
研究者として横顔をご紹介するとともに、研究の意義や楽しさを語ってもらいました。聖心女子大学の魅力をより深く知るために役立てていただきたいと願っています。
研究テーマ | : | 教育方法、学習のしくみ、評価のあり方などについての研究をしています。子ども・保護者・地域社会との協同的な学びの形成、学習環境づくり、子育て支援、教員の資質・能力の向上などを追求しています。 |
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著書 | : | 「学生との対話、教養と自己実現」『(学生と楽しむ大学教育ー大学の学びを本物にするFDを求めてー)(共著)ナカニシヤ出版、「教養について、ともに語りましょうー教養および教養教育の来し方と行く末ー」『ゆとり京大生の大学論ー教員のホンネ、学生のギモン』(共著)ナカニシヤ出版、「新人教員の苦悩に対して教員養成には何ができるか」『教師になること、教師であり続けることー困難の中の希望ー』(共著)勁草書房、「学生の力を「育てる」協働的FDー山形大学の挑戦ー」『学生・職員と創る大学教育:大学を変えるFDとSDの新発想』(共著)ナカニシヤ出版、「学生の力が花開く時ー教養科目『なせば成る!〜大学生活事始め〜』」『学生主体型授業の冒険2ー予測困難な時代に挑む大学教育』(共著)ナカニシヤ出版、「〈新しい能力〉と教養ー高等教育の質保証の中でー」『〈新しい能力〉は教育を変えるかー学力・リテラシー・コンピテンシー』(共著)ミネルヴァ書房、「現地体験型授業「フィールドワーク 共生の森もがみ」のしくみー学習の質の向上と、地域と大学の持続可能な発展を求めてー」『学生主体型授業の冒険ー自ら学び、考える大学生を育むー』(共著)ナカニシヤ出版 |
『地球へ』(中公文庫ーコミック版)
著者:竹宮恵子
出版社:中央公論社
『地球へ』は、宇宙へ移民した人々の地球への帰還への物語です。人間とは何かを問う壮大なドラマとなっています。高校生の皆さんにも、私たちはどのような社会をつくりたいのか、「平和」や「平等」の意味について、この漫画から何かを感じ、考えてもらえたらと思います。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
米沢藩主、上杉鷹山公が家臣に詠み与えたということば。
「為せば成る…」は、私の座右の銘。前任地の山形県にある米沢という地のお殿さま(江戸時代)が詠んだ有名な言葉です。頭の句だけで語ることが多いのですが、「成らぬは人の為さぬなりけり」が重要だと考えています。ただ、頑張っても周りの環境でどうしようもないこともあるということも一緒に伝えなければならない言葉だと思います。
杉原先生は、最初から教育学の研究者を目指していたわけではない。子どもが好きで幼稚園の先生を目指し、小学校教員、特別支援学校教員を経て、幼稚園の現場の仕事に就いた経歴を持つ。その後、もっと専門的に勉強したいという気持ちに押されて大学院へ進み、研究者となった。
専門は教育方法学。学習論の領域において、学習とはどのようにして成立していくのかというテーマで研究を進めている。
「前任校では、大学生はどうやって学ぶのか、大学教育はどうやったら良くなるのか、面白くなるのかといったことに取り組んでいました。その時のキーワードは『学習共同体』です。ただ受動的に教えられたことを暗記したり、問われた問題に答えていくという学習モデルではなく、主体的に、明確な目的をもって学習する、学んだ先にあること――たとえば言葉を学んだら人と話したり、伝えたりする――そのために言葉を学ぶといった『実践』をするための学びについて追究してきました。そうした学びには、必ず人と人との関わりがあり、共同的、能動的に学びが進んでいくという考え方です。」目指す実践のためには、知識の必要性があり、意欲と学力が分離せずに進んでいくというメカニズムで学習をつくっていくということだ。
現在、聖心女子大学では、教員養成の課程において教育現場を強く意識したケースメソッドで教育を行っている。「現場ではこのようなことが起こるから、この学問知識が必要なんだよと、具体的な事例をあげて授業を行っています。また、現場では教科書通りには上手くいかないこともあるということも大切な事例として伝えるようにしています。」
また、これまで培ってきた学習共同体としての考え方は、現在の教育者を目指す学生の学びにも生きているという。杉原先生の授業やゼミでは、学生同士、あるいは先生と一緒に皆で学び合うだけでなく、地域社会との連携した取り組みがなされている。「教室の中だけで一生懸命に点数を取るために勉強をした人は、先生になったら同じように点数を取るためだけの授業をしてしまうと思います。学んだものを活用、実践する場所を教えていかなければならないという考え方から、地域と連携し、そこで活動することで地域の人も助かるし、学生としても学びがあって成長するというサービスラーニングを実践しています。」つい先日、大学のすぐ隣にある小学校の祭りに基礎課程演習を受講する1年次の学生が参加し、「エコ」をテーマにしたブースを出展した。学校というところが、地域と連携して活動するイベントを通して、学生たちが子どもの遊びに貢献したわけだ。子どもたちやその保護者の方々と実際に触れ合ってみることから、学生自身の学びへのフィードバックは大きいものがあるという。
ゼミに在籍する学生の研究テーマも、実際に現場に赴くフィールドワークが主となっている。「自然体験活動の意義についての研究や、読書嫌いの克服について、子育て支援と働く女性のサポートについてなど、それぞれの学生が興味を持ったテーマで自由に研究を行っています。私の役目は、現場に出て生の声を聞くように背中を押してあげることです。」
「教育学の研究の面白さは、1つめは、理論と実践(=教育)とが循環して感じられること。研究の中でこの間発見したことは、実際の教育においてはこんなところで現れるんだというように、理論と実践とが日々、有機的につながっている感じがします。2つめは、地域との関わりが深くなること。広尾の商店街の方々とは、隣接する本学ならではのお付き合いも深まり、今後の連携が楽しみです。そして3つめは、現場に学生が入り込むことで、化学反応が起きることです。」現場ではさまざまな発見があり、若者の感受性の広さに出会うことも多々あるという。例えば、何かを仕掛け、子どもたちが前のめりで目を輝かせはじめた瞬間に出会った時、それを工夫した学生も嬉しいし、先生自身も発見があり嬉しいという。そこに、研究活動の醍醐味があるようだ。
「これから教育者を目指し学んでいきたいという方々には、専門職への準備を怠らないことを前提として、ゆとりという無駄を持って、自由なこと、やりたいことに積極的に取り組んでほしいと思っています。」