聖心女子大学の奥行きを知る
研究者として横顔をご紹介するとともに、研究の意義や楽しさを語ってもらいました。聖心女子大学の魅力をより深く知るために役立てていただきたいと願っています。
研究テーマ | : | 応用言語学、言語習得学、構文習得、談話分析、コーパス言語学 | ||||||||||
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著書 | : |
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『The Great Gatsby』
出版社:Simon & Schuster
『Alice’s adventures in Wonderland』
出版社:Tate Publishing
研究のため言語学の専門書を読むことが多いですが、できるだけジャンルにこだわらず幅広く本を読むように心掛けています。活字だけの情報から、自分の知識、経験、それから想像力を駆使してそこに書かれている世界を思い描く―読書にはそうした楽しみがあります。英語が好きな方はぜひ原書で、言葉のリズムを感じながら読んでほしいです。初めは難しいかもしれませんが、何度も読めば慣れてきます。きっと自分だけの感動に出会えるはずです。
『Active English Skills : Communicative English through Tezuka Manga』
手塚治虫のマンガで学ぶコミュニケーション英語の基礎
著者:奥切恵、ハウエル・エバンズ
出版社:マクミランランゲージハウス
手塚治虫のマンガが大好きなので、こんなテキストを作ってしまいました。『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』のマンガのシーンをピックアップして、リスニング、語彙力を高め、そしてよく使われるパターンの会話をマスターします。「Manga」は今や世界の共通語。手塚マンガの内容を知っておくことも立派な教養です。
大学で英語を専門に学ぼうと考える学生には、「将来は英語を使える仕事に就きたい」という夢を抱いている人が多いだろう。奥切恵先生の研究分野は、「英語を学ぶ人が効果的に、かつ速く英語を習得するためのプロセス」だ。
「実際に仕事の場で活躍しようと思うなら“英会話”のレベルでは不足です。海外で友達を作りたいとか、旅行に行ったときに困らないようにという目的ならば、それでも構いません。目的を見据えて学ぶことが大事なのです。」
書店に行けば、英語習得の本があふれている。“このフレーズだけ覚えればOK”“1ヶ月で話せる”のような魅力的な言葉がタイトルに躍っているが……。
「よく学生に、本当に役立つのはどんな本かと聞かれますが、その答えは個々の中にあるのです。起点になるのは、自分がどうしたいのか。長期留学して学位を取りたいとか、通訳を目指したいとか。「英語ができるようになりたい」から一歩深く掘り下げてゴールを考えることから始まります。」
日本語にもいえることだが「言葉を正しく上手に使う」とは、場面や内容に適した語句や表現を選択することである。奥切先生は、学生たちが留学先で、また就職したのちに、いかに英語を使いこなして活躍できるかを念頭に置いて、日々授業を行っている。
「『英語コミュニケーション』の授業では、学生が留学先で最初につまずきやすいプレゼンテーションやライティングに力を入れています。ある程度日常会話ができてもアカデミックな場では通用しない、分かりにくい英語になっていることが往々にしてあります。日本語では、みなさんはカジュアルな場と公的な場で自然に表現を使い分けていますよね。英語におけるそれを知り、身につけることが必要なのです。」
単なる「形式」を覚えるのではなく、奥切先生はその奥に潜む日本語と英語の違いについても言及する。
「そもそも日本語表現にはあいまいさがあると言われます。それは読む人に解釈を委ねるような性質があるためでしょう。英語との大きな違いはここにあります。英語は、発信者が「自分はどのように受けとってもらいたいか」を明確に表現する性質が強い。だから、私たちが英語で書く、話すときはそこを意識しないと、文法的には正しくても英語圏の方に理解しにくい表現になることがあるのです。」
奥切先生が行っている研究は、英語圏の人々がよく使う語句や表現に着目したものだ。膨大な量の文章やスピーチを分析し、そうした語句や表現について、使用される頻度だけでなく「どのように使われるか」、「それにはどのような意図があるのか」を考察しているという。
「例えば、大統領選候補のスピーチなどでは“I can....”というフレーズが使われることがあります。例えば“I can decide....”と繰り返すことで、自分にはリーダーシップがあることを印象づけることができます。演説の場では、自分は何をするのかを明らかに示し、自分を演出することが重要です。何度も繰り返すことで印象づけるという意図もあります。人に訴えるには、耳に残りやすい音のリズムも重要ですね。聞き手(読み手)を意識しながら話す(書く)ことが、プレゼンテーションには不可欠なのです。」
研究成果はご自身のサイト http://www.u-sacred-heart.ac.jp/okugiri/ で公開し、内外の研究者はもちろん、誰でも閲覧できるようにしている。
「私の研究がこの分野の研究者や、学生の英語習得に貢献できればうれしい限りです。研究を通じて世界の人々とつながっていることに大きな充実感を感じます。英語が好きな皆さんには、英語を使ってどんどん外に出ていって世界中で活躍してほしいと思います。そして、いつか必ずそれが自分の幸せとなって戻ってくるようになると信じています。」